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2011年7月

2011年7月17日 (日)

無期限収容が人間性をむしばむ ~法務省東日本入国管理センターで外国人収容者と面会して~

下のコラムは人権団体アムネスティ・インターナショナル日本が主催する日本の外国人収容所訪問ボランティアに参加した際、私が提出したレポートです。アムネスティ静岡グループの通信に掲載していただきました!

このボランティアは、日本に滞在許可がない外国人を収容する外国人収容所を月1回訪問するもので、アムネスティ難民チームの会員の方と共に、1回の訪問につき3人のボランティアが同行できます。収容所では、面会を希望して事前にアムネスティに電話連絡してきた収容者に20分ほど面会します。

面会では、「なぜ日本に来たのか?」「やむにやまれぬ事情があって日本にきたのか?」「今後も日本にとどまりたいか否か?」「現在の健康状態は?」などを質問し、しかるべき対処を検討する情報源とします。しかるべき対処とは、祖国にいられない事情があって日本にやってきた人の難民申請を手伝う、健康状態が悪い人に対しては入国管理局に医療処置を促すなどです。

ぜひご一読ください。専門用語は文末に注釈を入れています。

     

「無期限収容が人間性をむしばむ」

法務省東日本入国管理センターで外国人収容者と面会して
2011年5月27日 深山沙衣子

 2011年5月25日、アムネスティ・インターナショナル日本が主催する法務省東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の外国人収容者面会ボランティアに参加させていただいた。私がこの面会ボランティアに参加した理由は、日本政府による外国人収容・管理の実態として、日本に3カ所ある代表的な外国人収容所の1つ(注1)を見ておきたかったことがある。

 東日本入国管理センターは都会から隔絶され、山と畑に囲まれていた。5月で新緑が鮮やかということもあるが、広い敷地は緑豊かな木々に覆われ、静かだ。最寄り駅からもタクシーが必要なへんぴな土地に同センターがあるのは、人目に触れさせないよう密室で外国人収容・送還を行いたい法務省の意図があるのではと思わせた。

 ここは東京・品川にある外国人収容所(注2)と異なり、被収容者の家族が面会するにも交通費、時間、手間を要する。実際に面会者の待合室は、家族とおぼしき面会希望者が品川に比べて格段に少なく、ぽつぽつといるだけだ。「家族や支援団体の人間から遠く離れた場所で収容を行う」法務省の意図は成功している。

 しかしこちらには、牛久の会(注3)という外国人収容所の処遇改善を求めるボランティア団体がおり、待合室では同会メンバーが5人ほどいて、被収容者の面会を待っていた。代表の田中喜美子氏は「今日会う予定の被収容者は19人」と語る。精力的に面会をする姿に感銘を受けた。毎週水曜日にボランティア面会に訪れる牛久の会の継続性には頭が下がる。

 私がお会いした4人の被収容者の1人はアフリカ出身の女性で、仮放免保証金詐欺(注4)ともいえる被害にあっていた。品川の外国人収容所に出入りする自称・行政書士に話を持ちかけられ、彼に家族の電話番号を教え、家族は多額の費用を持ち逃げされたという。彼女が知るうちで被害者は6人、被害額は1人につき17万円から80万円。ビザ取得の術がなく、しかも法務省によりオーバーステイで収監された外国人の弱みにつけこむ自称・行政書士のあざとさに、あきれ返ってしまった。つたない日本語で被害状況をしたためた紙を狭い面会室のアクリル板越しに見せる彼女は「今もあいつは品川の入管を出入りし、外国人をだまくらかしている。収容されていては何も訴えることができない」と無力感をあらわにした。

 4人の被収容者が共通して言うのは、皮膚の湿疹、歯や心臓や腹部の痛みなど、何に関しても飲み薬をとにかく多く処方されること、それらはあまり効果がないこと、そしていつまで収容されるか分からない無期限収容への不安だった。難民申請をする者、する意図がない者さまざまで(注5)、難民申請をしているにせよ、難民認定を受ける確たる証拠があるかどうかは、たった1回の面会では測りかねる(注6)。だが中には難民申請した後も無期限で収容されている人がおり、難民申請中の拘束を禁じる難民条約違反が公然と行われている(注7)。それ以前に、低レベルの医療しか受けられない環境にさらしているのは人道上問題がある。昨年出た自殺未遂者と近くの独房に収容されていたインド人男性と面会したが、未遂者は収容所内でハンガーストライキを行ったため、自殺を図る前の数日間、飲み水を与えられていなかったという(注8)

 彼ら外国人被収容者の犯した罪とは何か? 日本にいる法的な権利がないということだ。 しかしこれは飲み水を与えられない情況にさらされるほどの罪なのだろうか? 私たちの社会はこうしたビザのない外国人労働者なくして車のパーツを組み立てられず、都心のコンビニや居酒屋、レストランは運営できない。社会に必要な労働者として外国人を便利に使っておきながら、一方で「外国人は危険」という標語をあえて流し、不法滞在と分かると無期限に収容する日本人の態度は、少々傲慢に思える。外国人労働者が社会に必要なのであれば、しかるべきビザを設けて付与すべきである。法務省が「不法滞在の外国人が犯罪に走るケースが増えている」と言うのは、単なるオーバーステイの外国人労働者と、麻薬密売や強盗事件を起こす外国人を混同して外国人全般を排除するよう国民に喧伝しているのだが、前者は無期限収容の罰を受けるほどの罪を犯しているとは思えない。

 難民申請者も含めて、外国人を無期限に収容所に入れるのは彼らの人間性をむしばむ。収容するならせめて期限を決め、しかるべき審査をして、オーバーステイ以外の罪がなければ早急に仮放免を出すなど被収容者の処遇を明らかにすべきだ。
 そして最終的には、彼ら、彼女ら外国人と日本人が共に生きる公正な社会のデザイン図を描き、デザイン図を広く国民と共有していく必要がある。このようなことを実感した牛久の訪問だった。

     

(注1)日本に3カ所ある代表的な外国人収容所の1つ…入管行政を行う機構は法務省入国管理局と、その下部にある地方入国管理局8カ所、さらにその下部の同支局7カ所、出張所61カ所である。ここで言う3カ所とは、上記の機関とは別に、滞在許可のない外国人を収容する大規模施設を指す。茨城県の東日本入国管理センター、大阪府の西日本入国管理センター、長崎県の大村入国管理センターだ。

(注2)東京・品川にある外国人収容所…入国管理局の下にある地方入国管理局の1つ、東京入国管理局を指す。茨城県の東日本入国管理センターより小規模だが、収容施設として機能している。長期収容の場合、品川の東京入国管理局から茨城県の収容所に収容者が移送されることがよくある。

(注3)牛久の会…「牛久入管収容所問題を考える会」の略。収容者に毎週面会にいく活動などを通じて、収容所の待遇改善などを求めているボランティア団体。同団体は2011年度第25回東京弁護士会人権賞を受賞している。私が知るミャンマー(ビルマ)人難民たちの多くは収容経験がある。そして収容されている間に同会に世話になっており、彼らは同会代表の田中氏を非常に敬愛している。収容経験者で同会のメンバーになっているミャンマー人もいる。

(注4)仮放免保証金詐欺…仮放免とは入国管理局が、収容者などの請求もしくは入国管理局の職権により、収容を一時的に解く措置。詳しくはコチラ(法務省入国管理局HP)。

仮放免の際、収容者は身元保証人と保証金を求められるが、日本に身寄りのない外国人にとって双方を探すのは大きな負担となっている。保証金は300万円以下とされているが、人によって20万円だったり50万円だったり、「まけて」と言って10万円下がったりする。これは保証金について定める法律がないため、入国管理局による判断とさじ加減によって保証金額が変動するからだ。この現状を利用して、長いこと収容されて収入のない外国人に対し「代わりに保証金を払ってやるから金をよこせ」と触れ回るサギがいる、ということ。外国人を入国させるブローカーは、日本への入国手配にあたって1人につき数十万円から数百万円の金額を要求するため、外国人も「日本にいるための処置ならば」と不思議に思うことなく、数十万円なら平気で払ってしまう。

この時点で分かっていたことは、今回のケースでの被害者は全員女性の外国人5人で、国籍はバラバラ。うち2人は送還で帰国したため、払った金は泣き寝入り状態だ。

(注5)難民申請をする者、する意図がない者さまざまで…自身の政治思想や宗教、性別などによる迫害で逃れてきた外国人は難民申請をする場合が多い。だが、仕事をして外貨を稼ぐ目的で来た外国人や、かつてそうした目的で両親が来日した際についてきた子どもが成人し、その後も日本で生活しているが滞在許可がない、といった場合は難民とは言いがたく、収容者自身も難民申請をする意図がない。

(注6)難民申請をしているにせよ、難民認定を受ける確たる証拠があるかどうかは、たった1回の面会では測りかねる…難民申請すると、入国管理局から難民認定まで数回の審査を受ける。審査基準に該当しないと難民とは認定されない。

現在の法務省入国管理局長、高宮茂氏いわく、現在の難民認定で問題になっているのは「申請者の証言が正しいかどうか」。

たとえば「ワタシはパキスタンで◎◎という少数派の政治結社に入っていて、反対勢力の人間に暗殺されそうになった」と申請者が証言しても、日本の入国管理局は現地まで行って真実を確かめる術がないし、あまり真剣に確かめようとする意思もない。だからたとえ身の危険が迫っている人が真実を語っていても、入国管理局は難民に該当する迫害を受けていないと判断することもある。一方で逆に申請者が日本の滞在許可を得るため難民申請をして、ことを大袈裟に語っている可能性もある。

(注7)難民申請した後も無期限で収容されている人がおり、難民申請中の拘束を禁じる難民条約違反が公然と行われている…難民条約とは、日本が加盟している「難民の地位に関する条約」。同条約31条には「締約国は、…難民であって許可なく入国、滞在した者に対し、不法入国および不法滞在を理由として刑罰を科してはならない」とある。日本の外国人入国管理は、難民も「不法滞在者」として収容しているため、同条約にそぐう待遇をしていない。

ただし難民条約31条では、上記の文章の後に、「当該難民が遅滞なく当局に出頭し、かつ、不法に入国、滞在することの相当な理由を示すことを条件とする」と付記されている。これを根拠にしているか分からないが、入国管理局は現在、入国から半年以内に難民申請した外国人に対しては仮滞在許可を出し、祖国へ強制送還する手続きを停止する。つまり不法入国や不法滞在に対する刑罰は科さない処置をとっている。

しかし実際の難民に事情を聞くと、来日してすぐに難民申請をする知識や余裕のある人はほとんどいない。ましてや警察と一緒に入国管理局の職員が滞在許可のない外国人をしょっぴいている現状では、難民であっても難民申請をせず、警官に職務質問されないよう気をつけながら何年も生きてきた人が多い。ゆえに入国後半年以内に難民申請をすれば・・・という仮滞在許可制度は机上の空論に近い。

私はこの難民条約違反に関する質問を現・入管局長にする機会があった。彼は「難民申請者でもオーバーステイ年数が長ければ収容することもある。しかし祖国に送還はしていない」(つまり申請者の命は守っている)と答えた。

(注8)昨年出た自殺未遂者と近くの独房に収容されていたインド人男性と面会したが、未遂者は収容所内でハンガーストライキを行ったため、自殺を図る前の数日間、飲み水を与えられていなかったという…2010年に東日本入国管理センターで収容者2人が自殺した。詳しくはコチラ(みやまさえこブログ記事)。ほかにも自殺未遂者がいたという話。2011年5月時点の情報で、その自殺未遂者は埼玉県の病院に搬送されたが、その後どうなったかは分からないという。ハンガーストライキは収容所の処遇改善を求めた行動。

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