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2012年9月 2日 (日)

ビザが出たのに後味が悪いのは、日本が市民社会でないと実感したからだ

7月末、わたしがミャンマーへの渡航ビザを申請したところ、ミャンマー人の夫が日本のミャンマー大使館に支払うべき税金243万円もの税金を納めないと、わたしのビザを出さないと大使館に言われた。在ミャンマー日本大使館にはミャンマーにいる家族の来日ビザを出してもらえず、わたしがミャンマーに行くには243万円が必要だということで、どちらにせよ家族が日本でもミャンマーでも会えないと国家権力からのたまわれたも同然の状況に、いいかげん頭にきたので、ダメもとで国会議員、中川正春防災大臣に陳情した。

なんで中川大臣に陳情したかって、以前、取材させていただいたことがあって、選挙権のない難民の話もよく聞いてくださるゆえ、「たかが一国民のわたしでも、陳情してもいいかな」と安易に考えただけだ。「国家権力に関することで困った場合、みんな何してたっけ・・・」と昔のサラリーマン記者時代の記憶をたぐりよせたら、ある、がん患者で未承認薬を使いたいと訴え続けた方が、かつて国会内のレストランで議員を出待ちして、手当たり次第にビラを配ることから始めて、最終的に未承認薬が承認されたという話を思い出したのだ。「そうだ陳情だ」と。

結果として、中川正春防災大臣の事務所から、ミャンマー議連の田中慶秋議員と外務省につながり、外務省の方々が在日本ミャンマー大使に「日本人にきちんとビザを出して欲しい」と訴えてくださって、8月31日にビザは下りた。外務省の方が同席して、わたしたちとミャンマー大使との面談も実現した。そこで大使館職員から、わたしのビザ発給に絡んで、夫が税金を支払う話は「別物として考えたい」という言質を引き出した。

しかし夫の税金については、日本のミャンマー大使館では払わなくていいが、ミャンマー国外務省で支払うか否かを検討したいとのことで、ついでに難民の夫のパスポート発行についても、在日本ミャンマー大使館では行えず、ミャンマー国外務省が判断するとのことだった。難民に関しては、ミャンマー国に対して今まで「悪いこと」を行ってきたので、大使館権限ではないということだろう。

ビザが下りるまで、永田町や霞ヶ関をたずね、ミャンマー大使館には4回も行ってしまった。いったい、この手間はなんなんだろうか。何事もスムーズに行うことに慣れている、ひ弱な日本人としては、けっこう心身ともに消耗する出来事だった。そしてわたしの渡航に関してはミャンマー人の夫は税金を大使館に納めなくて済んだが、他のミャンマー人と日本人カップルの方々は、いまもなお、税金なのか、認証発行なのか、離婚時の帰国費用デポジットなのか、とにかく肩書きがおかしい金銭を徴収されている。これは、わたしだけの例外事項なのだ。政治家が動いたから、各所が対応するだけ。

大使館という日本ではない場所の出来事とはいえ、日本は、やはり霞ヶ関と永田町とつながりの深い人々が、社会のさまざまな恩恵にあずかりやすいシステムになっている。草の根から動いて、機会均等を訴えるというフラットな社会構造、つまり市民の意見が国家権力に通りやすい市民社会を目指すより、権力のヒエラルキーにしがみついたほうが物事がスムーズだ。だから、ビザが出てうれしいけれど、後味がわるくてしょうがない。この後味の苦味の理由は、第一にヒエラルキー社会の現実をあらためて認識したから、第二に、わたしの友人たちが、いまだミャンマー大使館に搾取されているからだと思う。

健全な恩師・師弟関係、上司・部下関係、先輩・後輩関係、リーダー・メンバー関係は必要なのだ。というより、導く人間とついていく人間がいるのは、自然の摂理にかなっている人間関係だと思う。アジアの多くは、人間関係や社会構造が、権力集中型で、下層からどんどん縦軸に積み重なるヒエラルキーでできている。しかし、やみくもに一部のみに権力が集中して、ほかの大半はそこに追従せざるを得ない社会構造は、日本にとって、じゃっかん古いモデルになってきたのではないか。東日本大震災以降、人々は自分の意見を発信したくなった。それも、単なるつぶやきではなく、きちんとした問題意識を語りたくなり、それにより市民レベルから社会を変えていきたくなったのだ。

多くの一般市民は議員に陳情などしない。陳情という行為すら知らない。学校や社会が教えないからだ。なぜ教えないからって、多方面から陳情されたら、一部の権力集中組織にとって、面倒だからだ。でもわたしの意見は、もっと一般の人々が陳情していいんだと思う。そうでないと、議員は陳情という行為を知っている業界団体の顔ばかり見るようになるし、現にそうなっている。

もう荷造りしなければならないので、ここらへんでやめときます。この件は、日本に市民社会を、っていう動きをやっていきたくなった出来事でした。ちゃんちゃん。

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コメント

これはミャンマー大使館あるいはミャンマー政府の今の現状ですな。あなたのことを日本政府にもキッチンと分かるよにしないと ミャンマーの民主化へのはまだまだじゃないですか?

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